「タルク」と読んだり、「ターク」と読んだりされています。どちらが正解かはわかりません。
アトピー性皮膚炎の重症度の評価に有用な血液検査です。
平成20年7月1日から保険適応となり、一般の診療所でも検査ができるようになりました。
アトピー性皮膚炎の血液検査では、
特異的IgE検査、非特異的IgE検査が有名です。これについては、
ここを参照して下さい。
これらの検査は、何に対してアレルギーがあるのかを知るためには有用です。
しかし、逆に言うとアレルギーの体質を調べているようなものですから、現時点の皮ふの状態をほとんど反映していません。頑張って治療してアトピー性皮膚炎がよくなったときに検査をしても、それほど値が変わらないのはそのためです。
TARCの値は、現状のアトピー性皮膚炎の状態を反映しますので、重症度の評価には有用な検査です。
皮ふの状態がよくなれば、TARCの値も低下します。
TARCの難しい話
TARCがどういったものかは、難しい話ですので参考程度に記載します。
アトピー性皮膚炎では、様々な刺激によって皮ふ病変の細胞(表皮角化細胞)などからTARCの産生が誘導または増強されます。このTARCがアレルギー炎症を惹起するリンパ球(CCR4を発現したTh2細胞)を患部へ遊走させ症状を増悪させます。
ですので、炎症の強い時期にはこのTARCが増加しするため、重症度を反映して検査値が鋭敏に上昇します。炎症が落ち着いた時期には逆にTARC値が低下します。
TARCによるリンパ球の炎症部位への遊走のシェーマ(自作してみました。)
TARCの有用性
TARCを調べることでどんなメリットがあるのでしょうか。
- 現在の治療でアトピー性皮膚炎がうまく治療できているか確認することができます。
- 皮ふの状態が検査値で表されるため、目に見えて治療の目標を持つことができます。
- 見た目にはよくなっていても、TARCが高値を示すときには炎症が残っていることがわかります。
- 定期的に検査を行うことで、適切な治療法を認識することができます。
これらのことが、検査会社の資料に書いてあります。
内臓機能や血糖なら血液検査をしてみなければわかりませんが、皮ふは目に見えるので、わざわざ血液検査で数値化しなくても、実際に見れば状態がよいかどうかはわかると思われるでしょう。正直言って、そう思っている皮ふ科医も多いと思います。(実は私もそうでした。)
しかし、炎症には隠れた炎症もあって、目で見て正常に見える皮ふでもTARCを測定すると高値を示すことがあります。こういったときには皮疹はないのに患者さんはかゆみを訴え続けるようです。そして、外用療法にてTARCが低下するとかゆみもなくなっていきます。
つまり、皮ふなら目で見ればわかるという常識が、必ずしもそうではないとわかりました。TARCの有用性が理解できると思います。
TARCの基準値
成人 |
450 pg/ml未満 |
小児(2歳以上) |
743 pg/ml未満 |
小児(1歳以上2歳未満) |
998 pg/ml未満 |
小児(6ヶ月以上12ヶ月未満) |
1367 pg/ml未満 |
重症度としては
|
TARC値 |
アトピー性皮膚炎の重症度 |
成人
(18歳以上) |
450-700 pg/ml未満 |
軽症 |
700 pg/ml以上 |
中等症以上 |
1000 pg/ml以上 |
重症 |
小児
(2歳以上) |
760 pg/ml未満 |
軽症 |
760 pg/ml以上 |
中等症以上 |
TARCの血液検査の料金
健康保険は適応されます。
以下の金額は3割負担の場合です。
初再診料、処方料などは別途必要です。
だいたい1週間で結果が出ます。
TARC検査は200点ですので3割負担の方で600円です。これに、判断料144点が加わるため430円が加算されます。
検査は月に1回までしかできません。