令和4年5月23日から処方できるようになった多汗症の治療薬です。
エクロックゲルに続く、
保険で認可された薬剤です。
エクロックゲルと同様に、
わきの多汗症のみの適応です。
作用機序も、エクロックゲルとほぼ同様です。
違う点が2つ。
@
9歳以降の小児でも使用できます。(エクロックゲルは
12歳以降でした。)
A
ワイプ剤(拭き取りシート状)の薬剤です。
逆に同じ点は、いずれも妊婦、授乳婦には使用は勧められていません。
ラピフォートワイプの形状、使い方
形状見本の写真です。
薬液が浸った
不織布が
1枚入っています。
不織布を広げると
12.8×8.9cm大です。
(形状見本なので実際とは異なる
かもしれません)
薬液は
かなりヒタヒタです。
この不織布を手で持って
両方のわきに一拭きします。
使用後は
手をしっかり洗います。
(これはかなり重要です!)
手で持って拭きますので、
その手で目のまわりを触れると
目に副作用が生じる恐れが
あります。
そのため、もし副作用が起こっても
軽症で済むように、
夜に外用する
ことが勧められています。
ラピフォートワイプの作用機序
ラピフォートワイプの作用機序は
エクロックゲルとほぼ同じと思ってもらえばよいと思います。
ですので、エクロックゲルのページと同じ内容を下に示します。
「エクロックゲル」→「ラピフォートワイプ」に読み替えてください。
--------以下、エクロックゲルのページから引用----------------------------------------------------
多汗症の原因は、エクリン汗腺という汗の腺の機能亢進です。この汗腺は交感神経節後ニューロンという神経線維から放出されるアセチルコリンの刺激で汗を分泌します。
つまり、多汗症の治療のためには、このアセチルコリンの刺激を止めればよいことになります。
ボトックスが
神経終末からのアセチルコリンの放出を抑制することで、アセチルコリンの刺激を止めているのに比べ、エクロックゲルは
アセチルコリンが汗腺にくっつくところをブロックすることでアセチルコリンの刺激が伝わらないようにしています。
シェーマで示すと下のような感じですね。
でも、どちらの薬もアセチルコリンの刺激を抑制することで発汗を押さえていますので、
作用機序はほとんど同じです。
-------以上、エクロックゲルのページから引用----------------------------------------------------
塩化アルミニウム溶液との比較
では、塩化アルミニウム溶液との作用機序の比較はどうでしょうか。
塩化アルミニウム溶液は作用機序が全く異なります。
塩化アルミニウム溶液は、汗を出す管(汗管)の細胞に作用し、この管を閉塞させることで発汗が減少するといわれています。
つまり、汗腺で作られた汗が汗管を通って皮ふに出るまでの通り道を塞いでいることになります。
したがって、
塩化アルミニウム溶液とエクロックゲル、ラピフォートワイプを併用する意義は大いにあると思います。
塩化アルミニウム溶液で効果が足りないときには、両方の薬剤を併用すれば効果は増強されると考えられます。
ただし、ラピフォートワイプは夜に外用することが推奨されています。(副作用対策です)
塩化アルミニウム溶液は拭き取らないといけないので、夜しか外用できません。
つまり、ラピフォートワイプと塩化アルミニウム溶液を併用することは、外用時間が重複するという点で困難ではないかと思います。(院長の印象ですから、何か解決策があるかもしれませんが)
ラピフォートワイプか? エクロックゲルか?
現時点(R4年5/23現在)は発売したばかりなので、自身の経験上の比較はできません。
効果は作用機序から考えてさほど差はないものと思います。
おのおのの院長の考える利点を記載します。
- ラピフォートワイプの利点
- 1回1包の使い切りシートなので、清潔感に優る。
- ラピフォートワイプは液体、エクロックゲルはゲル剤なので、ラピフォートワイプの方が乾燥が早い。
- 1回1包の方が忘れにくい?
- 少しだけ安いかな。
- エクロックゲルの利点
- 蓋を使用して外用するので、手や指に薬剤が付かない。
- 手や指に薬剤が付かなければ、目に入るリスクが少なくなる。
- 目に入るリスクが少なければ、羞明、霧視、散瞳などの眼の調節障害が生じるリスクが少ない。
- 朝に外用できるので、塩化アルミニウム溶液との併用が可能。
と、いうところでしょうか。
あとは、実際使用してみて、自身の使用感や好みで選択するところだと思います。
ラピフォートワイプの治療費
1日1包を使用します。
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薬価 |
3割負担の方 |
ラピフォートワイプ 1包 (1日分)
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262 円 |
79円 |
令和5年5月頃までは処方制限があります。1回14包までの処方になります。
(3割負担の方で、14日分で1100円くらいです)
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