ニキビのホルモン療法は
成人型の女性のニキビのみ適応があります。思春期のニキビや男性には基本的に適応はありません。
成人女性のざ瘡の特徴
○あごや首に生じることが多い。
○
生理前に悪化することが多い。
○乾燥肌にもできやすい。
○面疱が目立たず、丘疹や膿疱が目立つことが多い。
○悪化因子が多岐に認められる。
(ストレス、睡眠不足、不規則な生活、食生活の偏り、誤った スキンケアなど)
好発部位:Uゾーン
ホルモン療法とは、
ニキビの原因の一つであるアンドロゲンというホルモンの産生を抑制する治療です。
アンドロゲンには、卵巣、副腎でおもに産生される
テストステロンというホルモンがあり、このテストステロンから
didydrotestosterone(DHT)に変換されます。このDHTが皮脂腺を刺激して皮脂の分泌を促進しニキビを悪化させます。
どの段階でホルモンの作用を抑えるかは別として、ニキビのホルモン療法はこのDHTの産生を抑制することで、皮脂の分泌や毛包の角化を抑えることが主な目的です。
これらの機序はホルモンの構造や仕組みを把握していなければなかなか理解することが困難です。また、十分に解明されていない機序もあるようです。ですので、
大雑把にアンドロゲンというホルモンを抑えることが目的と考えればよいと思います。
ニキビのホルモン療法の薬剤
アンドロゲンを抑制するための薬剤はたくさんあります。
代表的なものをあげると、
@ スピロノラクトン
A 酢酸シプロテロン
B フルタミド
C 糖質コルチコイド
D 性腺刺激ホルモン放出アゴニスト
E 経口避妊薬
F 5αリダクターゼ阻害剤
があります。
この中では副作用の問題でニキビ治療にはとうてい使用できないものもあります。
効果と副作用のバランスから、ニキビの治療の使用されている薬剤は次の二つです。
@ スピロノラクトン
A 経口避妊薬(低用量ピル)
この2剤を単独あるいは併用しつつニキビの治療を行います。
詳しい説明は別のページに記載していますので、そちらを参照ください。
ニキビのホルモン療法の注意点
くどいですが、
成人女性のざ瘡のみの適応です。
まずは、
保険での一般的な治療をお勧めします。これらの治療で改善が得られない方で、下に示す症状のある方が適応になります。
■ホルモン治療の適応となる方
- 弱いあるいは中程度の多毛を伴う方
- 成人になって始まったか、あるいは成人になって悪化した方
- 顔面の皮脂が多い方 (いわゆるあぶら肌の方)
- あごひげの領域に限定した赤いニキビのある方 (上のイラストの部位です。)
- 胸や背中など広範囲にわたるニキビのある方
- 月経不順のある方
逆に、ホルモン治療を受けることができない項目もたくさんあります。
これらは薬剤によって異なりますので、おのおののページで確認ください。
ニキビのホルモン療法の流れ
1.初診時の診察
最初の診察は保険のカルテで行います。保険診療をしたことのない方はまずは保険診療での治療 をお勧めします。 その上で、ホルモン療法の希望がありその適応がある方には自費のカルテを作 製します。初診料が2,000円必要です。
2.写真撮影
3.治療を始める前の血液検査
末梢血、肝機能、腎機能、電解質、凝固系、総テストステロン、LH、FSHを測定します。
4.看護師から注意点の説明があります。すべての項目を了承いただければ同意書に署名をいただきま す。
−−−初診時はここまでです−−−
5.1週間後に再診していただきます。血液検査の結果から治療が可能と判断すれば内服を開始します。
6.さらに2週間後に再診していただきます。
7.血液検査、写真撮影を行います。
ニキビの新生が止まっていれば薬を減らします。新生が止まっていない場合は薬を増やすこともあ ります。
7.1ヶ月ごとに受診していただきます。