低温熱傷に正確な定義はありませんが、
一般的には、
「60℃以下の熱源によって引き起こされた熱傷」と定義されるようです。
こういった定義よりも、低温熱傷の一番の問題点は、
予想以上に深い熱傷になることです。
次に説明していきます。
熱傷を生じる温度と時間の関係
熱傷を生じる状況を思い描いてください。
服に火が燃え移ればやけどしますよね。
コーヒーを飲もうと
沸かしたお湯がかかればやけどしますよね。
このように、
65℃以上の熱源に皮ふが接すると、
瞬時にやけどします。
それに対し、低温熱傷は60℃以下の熱源で生じるため、瞬時にはやけどをしません。
例えば、湯たんぽに触れたからといって、すぐにはやけどしませんよね。
それなりの長さで熱源と皮ふが接する必要があります。
下の図は、熱源の温度とやけどを生じるまでの時間のグラフです。
このグラフからわかることは、
・44℃未満の熱源では何時間触れていてもやけどしない。(もちろん状況次第ですが)
・44℃の熱源でも7時間接触していればやけどする。
・50℃の熱源なら、2分くらい接触するとやけどする。
などでしょうか。
さらに、
低温熱傷を生じる要因として重要なのが、
「圧迫」です。
熱源に圧迫されると、低温熱傷を生じる時間が短縮されます。
例えば下のシェーマを見てください。
湯たんぽの温度が仮に44℃でも、湯たんぽの上に足を置いて押しつけた状態だと、短い時間で低温熱傷を生じます。経験的には、3-4時間で低温熱傷を生じると思います。
日常的によくある状況だとわかると思います。
低温熱傷の問題点
難しく言うと、
「皮ふ表面の理学的所見が軽微であるが、損傷がすでに深部に及んでいる 」
となります。
簡単に言うと、
「最初は浅いやけどに見えるけど、時間とともに深いやけどに変化する」
ということになると思います。
やけどの深さの分類については、
熱傷(やけど)のページを参照してください。
実際の症例です。
湯たんぽでやけどを受傷し、翌日受診されました。
その時点では水疱形成があり、II度熱傷の所見です。浅在性II度熱傷でも矛盾しない程度ですね。
しかし、24日目には中央の黄色の壊死組織が固着しており、III度熱傷になっています。
このように最初は浅いやけどに見えますが、徐々に深いやけどに進行するのが低温熱傷です。
同様に湯たんぽでの低温熱傷です。
受傷翌日です。
2週間後です。
1ヶ月後です。
やけどが徐々に深くなっていることがわかります。
深いやけどは、必ず痕が残ります。
傷が閉じるには2-3ヶ月必要となります。
院長からのお願い
寒い時期には、湯たんぽや電気アンカに注意するようにしてください。
特に、湯たんぽの上に足を置いて眠ることは避けてください。