スピロノラクトンはもともと高血圧の治療に用いられてきた古い薬であり、利尿効果という尿を増やす作用があります。(尿がたくさん出れば血管内の水分量が減りますので、結果として血圧が下がるわけです。)
スピロノラクトンの錠剤です。
別の働きとして、アンドロゲンが結合する部位に競合的に結合するためその働きをブロックする作用があります。その作用を利用してニキビの原因となるアンドロゲンの働きを抑え、成人型の女性のニキビを改善します。その他にも多様なホルモン作用を持つと考えられていますが、その個々の作用がすべて解明されているわけではありません。
いくつかの注意点はありますが、ニキビに対する効果は非常に高く、中止後にリバウンドが起きにくいのも特徴です。
※ 妊娠中の方、授乳中の方は内服できません。これからすぐに妊娠をお考えの方も内服をお勧めしません。
スピロノラクトンの副作用は?
もともと高血圧の治療に使用されている薬剤であり、長期間の使用経験がありますので大きな副作用はありません。
しかし、通常は高血圧を生じるような高齢者に投与することが多い薬剤です。これを成人女性のニキビに投与するため、通常では起こらない注意点があります。
@ 生理不順や不正出血が生じることがあります。
スピロノラクトンのホルモン作用によるものであり、ほぼ必須で生じます。そのため、低用量ピルを併用して規則正しい生理周期に誘導することを強くお勧めします。
まれですが、内服量が多いと、排卵を抑制することがあります。無月経が生じたときには、治療開始3-4ヶ月後をめど
にエストロゲン・プロゲステロン注射(デポー剤の筋注)を行い、正常な生理周期を誘発する必要があります。
ピルに関しては、産婦人科にて検査と処方を受けて頂きます。当院からは処方しておりません。
デポー剤の投与も産婦人科を受診して頂きます。
A のどの渇きなど、利尿効果による症状。
利尿効果により尿量が増えるため、のどが渇いたり脱水になったりということが考えられますが、現実的には持病のない方にこれらの症状が生じることはほとんどありません。少し多めに水分をとるように習慣づけてもらえば十分です。
B ごくまれに電解質異常や急性腎不全の可能性があります。
理論上は、重篤な副作用を生じる可能性があります。しかし、これらは高齢の方、あるいは心臓や腎臓に持病のある方が中心です。ニキビを生じるような若い方にはまず生じないと思います。
スピロノラクトンの治療法は?
注意! 当院では学術文献に報告のある以下のプロトコールのみ採用しています。他院で治療中の方で、プロトコール以外の治療を希望される方がおられますが、
希望には添えませんのでご了承ください。
- 通常、初回は1日に150〜200mg(6〜8錠)を朝、夕の2回に分けて内服します。
- 2週間後に再診し、副作用の有無を確認します。通常は、2週間で皮脂の分泌が減少し、4週目以降はニキビの新生が減少します。
- 8週間目まで同じ量で内服を継続し、ニキビの新生がないことを確認したら、その後は徐々に減量します。
- 減量は、1ヶ月ごとに50mgずつとゆっくり行います。そうすれば症状のリバウンドは起こらないことが多いと言われています。
- 3-4ヶ月の時点でエストロゲン・プロゲステロン注射薬を筋注して生理を誘導します。(低用量ピルを併用しない場合。)
スピロノラクトンの内服のプロトコール。
赤の矢印のところでニキビの新生がなければ50mgほど
減量します。
緑の矢印のところ
でエストロゲン・プロゲステロン注射薬を筋注して生理を誘導します。
当院でスピロノラクトンで治療した症例
平成26年2月からスピロノラクトン内服の治療を行い、現在十数人の患者さんが治療を受けられています。その中でホームページへの掲載を快諾頂いた患者さんの写真を掲示します。
スピロノラクトン内服前の写真です。一般的なざ瘡の治療とケミカルピーリングを行いましたが、これ以上は改善しませんでした。
スピロノラクトン8Tから開始し、2Tに減量した状態です。
脂漏は減少し、ざ瘡は軽減しています。スピロノラクトンを中止後は少し再発があるため、1Tで継続中です。(化粧されている点は差し引いてくださいね。)
スピロノラクトン内服前です。ピルとディフェリンゲル0.1%、ダラシンTゲル1%などで加療されていましたが、ざ瘡が改善していませんでした。
スピロノラクトン8Tから内服し、2Tまで減量したところです。あぶら肌は改善し、ざ瘡はまだ残りますが、活性はかなり落ちていると思います。
スピロノラクトンの適応となる方
- 弱いあるいは中程度の多毛を伴う方
- 成人になって始まったか、あるいは成人になって悪化した方
- 顔面の皮脂が多い方 (いわゆるあぶら肌の方)
- あごひげの領域に限定した赤いニキビのある方
- 胸や背中など広範囲にわたるニキビのある方
- 月経不順のある方
スピロノラクトンを内服できない方
- 過去にスピロノラクトンで問題のあった方
- 無尿または急性腎不全の方
- 高カリウム血症の方
- アジソン病(副腎不全)の方
- タクロリムス(商品名:プログラフ): 免疫抑制剤(移植治療後の拒絶反応抑制)、リウマチ、潰瘍性大腸炎で内服することもあります。 を投与されている方
- ミトタン(商品名:オペプリム): 副腎癌、クッシング症候群の薬剤 を投与されている方
- エプレレノン(商品名:セララ):高血圧の薬剤 を投与されている方
- 心疾患や動脈硬化症のある方
- 腎障害のある方
- 減塩療法をされている方
- 肝障害・肝腫瘍の方
- 妊娠中・授乳中の方
スピロノラクトン治療の料金(自由診療)
- 健康保険は適応できません。自費のカルテを作製した後に治療を開始します。
- 初診時には初診料2,000円がかかります。再診料は1,000円です。
- 初診時はまず保険で診療します。スピロノラクトンの適応と判断されれば、自費のカルテを作製します。保険の診療を受けられるときは、続けて保険のカルテで診療します。
- 令和元年10月から消費税率の変更に伴い料金を改変しました。
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単位 |
料金 |
初診料 |
|
2,000円 |
再診料 |
1回の診察につき |
1,000円 |
治療費 |
1錠(25mg) |
30円 |
1日 200mg (8錠) |
1ヶ月(28日)分 4,800円 |
1日 150mg (6錠) |
1ヶ月(28日)分 3,800円 |
1日 100mg (4錠) |
1ヶ月(28日)分 2,800円 |
1日 50mg (2錠) |
1ヶ月(28日)分 1,800円 |
低用量ピルの併用 |
現在取り扱っていません。 |
エストロゲン・プロゲステロン注射 |
現在取り扱っていません。 |