シミの治療の中で最も説明に時間を要することについて記載します。
予め読んでおいてもらえれば、診察時間が短縮できてとても助かります。
このページの内容を理解するためには、まずはシミの種類を知って頂く必要があります。
シミの種類については、
シミの種類と見分け方のページに詳しく記載しています。
まず、そちらをご一読ください。
シミの治療をする上で一番困ること
なんと言っても、
肝斑と他のシミの重複に尽きます。
特に、
肝斑と老人性色素斑が重複している症例が多く、とても気を使います。
どうしてでしょうか?
以下に説明していきます。
肝斑と老人性色素斑の重複について
肝斑と老人性色素斑の両方ともあっても、
おのおのが重複していなければ問題ありません。
自作のシェーマで説明します。
@ 肝斑と老人性色素斑が別々に認められる症例
肝斑+老人性色素斑ですが、
肝斑と老人性色素斑は
別々に認められます。
このときは、
老人性色素斑にはレーザーの照射が可能です。
老人性色素斑にレーザーを照射しても、肝斑にはレーザーがあたりませんから大丈夫ということですね。
A 肝斑と老人性色素斑が重複して認められる症例
問題なのはこちらです。
肝斑の中に老人性色素斑が認められます。
この場合は、
老人性色素斑に安易にレーザーを選択できません。
なぜなら、老人性色素斑にレーザーを照射すると肝斑にもレーザーがあたるからです。
肝斑にレーザーがあたると、
強い炎症後色素沈着が生じます。
つまり、老人性色素斑は
かえって濃くなる可能性があります。
そして、この
Aの症例がとても多いです。
だけれども、レーザーを希望されることがとても多いです。
なので、とても困ってしまいます。
また、肝斑があるのかどうかがはっきりしないことも多々あります。
肝斑はモヤモヤとしたシミなので、はっきりとは診断できないときがあります。
その場合は、
試験照射してみる以外に確かめる方法はありません。
肝斑と重複した老人性色素斑にレーザー照射をした経過について
では、肝斑に重複した老人性色素斑にレーザーを照射するとどうなるでしょうか。
これは症例によって違いますので、あくまで標準的な経過を示します。すべての症例が同じ経過になるとは言えませんのご理解ください。
その前に、一般的なレーザー治療後の経過を示します。
@ 老人性色素斑にレーザーを照射すると、数日で黒いかさぶたになります。
A 7〜10日でカサブタが剥げます。ピンク色のきれいな皮ふになります。
B 黄色人種では必ず
炎症後色素沈着が生じます。だいたい1ヶ月目がピークです。
C 3〜4ヶ月で炎症後色素沈着が薄くなり、きれいな皮ふになります。
では、
肝斑と重複した老人性色素斑にレーザーを照射したときにはどうなるでしょうか。
通常であれば、3〜4ヶ月で炎症後色素沈着が薄くなるところが、
横ばいのままになります。
肝斑にもレーザーがあたっていますので、その炎症後色素沈着がとれずに続いているためです。
ここが肝斑と重複した老人性色素斑の治療の難しいところです。
ご理解頂けましたでしょうか?
その後の経過はどうなるでしょう
では、肝斑に重複した老人性色素斑にレーザーを照射すると、もうどうにもならないのでしょうか?
これは
個体差がありますので、なんとも言えません。
ですが、
経験的にはほとんどの症例で炎症後色素沈着は徐々に薄くなります。
1例です。患者さんの同意の下に掲示しています。
右頬部に網状の皮疹とその中に小豆大の濃い皮疹が3カ所認められます。
肝斑内に老人性色素斑が認められる所見です。
正直、最初には肝斑があるとは認識できませんでした。
そのため、老人性色素斑に対してルビーレーザーを照射しました。
その3ヶ月後です。
炎症後色素沈着が目立つことがわかります。
肝斑に重複した老人性色素斑にレーザーを照射するとこのような炎症後色素沈着が長時間続きます。
この段階で、炎症後色素沈着としてトレチノインクリームの外用を開始しました。
1年後です。
炎症後色素沈着は消えていることがわかります。
このように、多くの症例では、炎症後色素沈着は1-2年すると消退します。
ただし、
消えないこともあるかもしれません。
ここは個体差ですので、予見はできません。ですので、その
リスクをしっかり理解、了承できる方にはレーザー治療も可能と思います。
老人性色素斑にレーザー治療をご希望の方は、自分に肝斑がないかどうか事前によく見て考えておかれることをお勧めします。
せっかく受診されても、肝斑があるためレーザー治療が困難という判断になることもあり、がっかりされるかもしれません。