しみ、ソバカスの治療には、
レーザー治療、光治療、塗り薬、ケミカルピーリングなど、さまざまなものがあります。
しみの種類によって、おのおのに得手不得手がありますので、まずは
自分のしみがどういう種類のしみなのか診断をすることから治療は始まります。
しみの種類については、
しみの種類と見分け方のページに詳しく記載していますので、参照ください。
代表的なしみです。 老人性色素斑 雀卵斑(ソバカス)
レーザー治療と光治療はいずれにしても光による治療ですが、
レーザーが特定の波長の光のみを増幅して照射するのに対し、フォトフェイシャルに代表される
光治療は全波長の光を照射して治療します。ですので、光治療の方がレーザー治療よりおとなしい治療である印象があります。逆に言うと、しみ、茶あざ、赤あざ、脱毛など目的を絞った治療ではレーザーの方が効果は高いと思います。
当院では、しみに対して
mini-Gentle LASEという
ロングパルスアレキサンドライトレーザーと
the Ruby nano Qという
Qスイッチルビーレーザーで治療を行ってます。
「老人性色素斑」に対するレーザー治療
境界が明瞭な円形のしみはほとんどが
老人性色素斑(通称 ろうはん)です。
基本的には加齢に伴うしみですが、レーザーの治療効果が一番期待できるしみです。
mini-Gentle LASE、the Ruby nano Qとも黒〜茶色い色素に反応するレーザーですので、基本的には治療後の経過は同じです。下をご参照ください。
照射後、
数日で薄いカサブタになり、このカサブタがとれると
ピンク色のきれいな皮ふが出てきます。白人であればこのままきれいになるのですが、日本人では必ず
炎症後の色素沈着を生じます。この時期には
美白剤(ハイドロキノン)を塗り徹底した
遮光が必要です。これを続けることで、炎症後の色素沈着は徐々に薄くなってきます。3ヶ月経過した後に、今度は弱めにレーザーを照射します。3回程度の治療を目安にします。
しみシミが2か所あります。上のシミにレーザーを照射します。
レーザー照射後3日目です。すべてカサブタになっています。
レーザー照射後7日目です。カサブタが半分以上とれています。とれた後はシミはなくなり、少しピンクになっています。
この状態が一番紫外線を吸収します。ハイドロキノン(美白剤)とコンシーラーによる遮光を必ず行う必要があります。
レーザー照射後2ヶ月です。少し色素の再燃が認められますが、もともとのシミに比べると薄くなっています。3ヶ月経過した段階で、再度のレーザー照射を検討します。
当院では美白剤として自家製の4%ハイドロキノンクリームを、日焼け止めとしてポーラファルマのルビパール コンシーラーを用意しております。
mini-Gentle LASEとthe Ruby nano Qのどちらがよいのでしょう?
当院には老人性色素斑に使用できる2種類のレーザーがあります。(注:平成29年4月20日以降)
どちらがよいのかという質問に論理的に答えるには、レーザーの仕組みを理解する必要がありますので、難しい話になります。もし、興味がある方は
Qスイッチルビーレーザーのページを読んでみて下さい。
簡単にまとめると
機種 |
1発の大きさ |
深達性 |
浅い
しみ |
深い
しみ |
薄い
しみ |
コスト |
MGL |
12-18mm |
弱い |
得意 |
苦手 |
苦手 |
安価 |
Q-ruby |
5mm |
強い |
得意 |
得意 |
得意 |
やや高価 |
MGL:mini-Gentle LASE Q-ruby:the Ruby nano Q
MGLは脱毛レーザーとしても使用できるロングパルス型のアレキサンドライトレーザーなので、
1発が最大18oと大きいことが利点です。1円玉の直径が2oですので、1円玉よりも少し小さいシミであれば、1発で治療ができることになり、とてもリーズナブルです。
その反面、ピークエネルギーが小さいため、
深いしみや薄いしみでは力不足の面を否定できません。
また、触ると少し膨らんでいるような厚みのあるしみにもちょっと効果が劣ります。
Q-rubyはQスイッチ型ですので、
ピークエネルギーが大きく深達性にも優れます。深くまで存在するようなしみやあまり色が目立たないようなしみにも効果が期待できます。腕や手の甲にできるような少し膨らんだしみにもある程度は効果があります。(完全に隆起しているときには、脂漏性角化症として炭酸ガスレーザーで削る方が適切です。)
最初はリーズナブルに治療を済ませたいときには、MGLを使用してみてもよいと思います。
それでも効果に満足がいかないときには、3ヶ月後に照射するときはQ-rubyに変更してもよいかもしれません。
もちろん、最初からQ-rubyを使用しても構いません。
対称性真皮メラノサイトーシスのようにMGLでは効果が期待できないしみもあります。その時は、最初からQ-rubyを使用するべきですね。
老人性色素斑と脂漏性角化症が混在したシミです。黄色い○で囲ったところには脂漏性角化症(イボ)があります。
このようなときにはジェントルレーザーでは効果がありません。Q-rubyであれば、脂漏性角化症にも多少は効果が期待できます。(仕上げには炭酸ガスレーザーが必要ですが。)
Q-rubyを照射して9日です。シミはカサブタになり、徐々に脱落しています。
照射後1ヶ月です。カサブタは全て脱落しています。イボは一部で脱落しました。
照射後4ヶ月です。炎症後の色素沈着は概ね消退しました。イボは一部残りますので、この段階で炭酸ガスレーザーで削切しました。
しみとイボが混在するときは、まずはしみの治療を行うことをお勧めします。
「ソバカス」に対するレーザー治療
ソバカスもレーザーが有効な病変として有名です。
しかも、
治療の経過は「老人性色素斑」と全く同じです。
レーザーを照射しすると、カサブタになりそれが剥げるときれいになるという経過ですね。
レーザーの機種は、MGLでもQ-rubyでも大丈夫ですが、Q-rubyの方が効果は優れていると思います。
ただし、ソバカスと老人性色素斑が違う点が1つあります。
それは、
「ソバカスは多発する」ということです。
当たり前!と思われるかもしれませんが、治療後の経過を考えるとこれはかなり重要です。
仮に、顔面に多発するソバカスに全てレーザーを照射したとします。
翌日にはどうなるでしょう?? 顔面がカサブタだらけになります。
このようにカサブタになって生活に支障がでる期間を、レーザー用語では
「ダウンタイム」といいます。
このダウンタイムが許されるかどうかは、患者さんの性格や生活内容によります。
例えば、受付をされているような女性が顔中カサブタになるときっと仕事に支障がでるでしょう。専業主婦の方ならあまり問題ないと言われるかもしれません。
ですので、このダウンタイムをよく考えて、治療法を考える必要があります。
このことを踏まえて、治療にはいくつかの選択枝があります。
- カサブタになる治療を選択する。
- 全ての皮疹に一度に照射する。
- 小範囲ずつ(コスメティックに隠すことができる範囲だけ)、照射を繰り返す。
- カサブタにならない(なりにくい)治療を選択する。
- 当院では、レーザーフェイシャル。フォトフェイシャルもこれに該当します。
1-aについて:ダウンタイムお構いなしという治療です。連休や正月、お盆などしばらく仕事を休める時に選択されてもよいですね。
1-bについて:ダウンタイムを最小限にしつつ、でもソバカスは1回のレーザー照射で薄くしたい人が選択されます。コスメティックに隠せる範囲は人によって異なりますので、一度の照射範囲は希望に従います。
2-aについて:これはMGL専門の治療です。クーリングをしつつレーザーを照射する方法で、いわゆるレーザー脱毛と同じように照射します。一度の治療ではそれほど薄くはなりませんので、数回繰り返す必要があります。
レーザーフェイシャルについては、次の項に詳しく記載します。
レーザーフェイシャルについて
〇〇〇フェイシャルと言えば、有名なのは
フォトフェイシャルですね。
「レーザーフェイシャルとどこが違うのですか?」という質問をよく受けますが、本質的には
全く別物と思って頂いた方がよいと思います。
フォトフェイシャルはIPLという機器によって行われる治療を指し、俗に
「光治療」と呼ばれるものに相当します。最初にも書きましたが、光治療は
幅広い波長の光を増幅して照射しますので、極端に言えば
赤いもの〜茶色いもの〜黒いものまで全てに幅広く効果があります。また、それほど反応は強くないので、カサブタになるようなダウンタイムはほとんどありません。
そのため、ある特定の疾患に対して治療をするというよりも、
肌質を整える目的で治療されるイメージがあります。逆に言うと、ソバカスやくすみなど特定の目的に対して行うと物足りない印象を受けられるかもしれません。
レーザーフェイシャルは、
MGL専用の治療です。Q-rubyでは治療はできません。
クーリングガスを照射しながらアレキサンドライトレーザーを照射しますので、老人性色素斑に照射するように
カサブタにはほとんどなりません。その意味で、フォトフェイシャルと同じような効果を得ることができます。
そのかわり、フォトフェイシャルと違い
茶色から黒い病変にしか効果は期待できません。毛細血管拡張症や赤ら顔などには効果がないと思います。逆に言うと、
ソバカスやくすみに特化すれば、フォトフェイシャルよりもレーザーフェイシャルの方が効果があると思います。
例外的に、にきびには効果があります。これは、にきび自体に効いているというよりも、にきびが生じている毛包にレーザーが作用して脱毛効果を起こすことで、にきびがよくなるものと考えられます。
つまり、レーザーフェイシャルの効果としては、
@ 色調の改善(ソバカスやくすみを取る)
A 吹き出物を少なくする(にきびの改善)
B 皮膚のコラーゲンを活性化させる(肌のキメを細かくする、ハリを持たせる)
が期待できます。
治療は1回では終了しません。
1ヶ月ごとに数回照射する必要があります。回数に制限はありませんので、数年単位で続ける方もおられます。
肝斑に対しては、レーザーフェイシャルであっても帰って濃くなる可能性がないわけではありません。
ただし、少し粒状で老人性色素斑と鑑別が難しいような肝斑では、レーザーフェイシャルを行いながら、濃いしみのみにQ-rubyを照射するという治療が行われ、かなりよい成績を残されています。
当院でも冬のみ限定で行う予定です。
しみに対するレーザー治療の注意点
ひとくちにシミと言っても、肝斑やほくろ、他の皮膚腫瘍のこともありますので、診察は通常の疾患と同じように保険診療で行います。レーザーの適応であり治療をご希望の場合は、自費のカルテに切り替えます。初診料は自費になります。
初診時に説明文書をお渡しします。治療の前後の注意点やおこりえることなどは、この書類に詳細に記載しています。未成年の方は保護者の承諾が必要ですので、一緒に来院してください。
しみのレーザー治療の料金(自由診療)
- 健康保険は適応できません。
- 痛みに対して麻酔の外用剤(エムラクリーム)を塗布することができます。ただし、治療の1時間前からクリームを塗布する必要があります。エムラクリームは5gで1,000円が必要です。
- 初診時のみ初診料2,000円がかかります。再診料は治療費に含まれます。
- 照射後の外用剤としてステロイド外用剤を200円でお渡しします。
- 令和元年10月から消費税率の変更に伴い料金を改変しました。
#だいたいのレーザーの費用をよく効かれますので、初回の金額の概算を書きました。
@1cm大のしみ A初診 B治療は1ヶ所のみ Cハイドロキノンは必要、コンシーラーは不要 という条件です。
しみ(老人性色素斑)の治療の概算(上記@〜Cの条件に該当する場合) |
|
初診料 |
レーザー料 |
ステロイド
外用剤 |
ハイドロキノン |
合計 |
MGL |
2、000円 |
2、000円 |
210円 |
1,850円 |
6,060円 |
Q-ruby |
2、000円 |
5、000円 |
210円 |
1,850円 |
9,060円 |
治療費の詳細は下の表を参照して下さい。
しみ(老人性色素斑)の治療 |
MGL |
1回目(1ショット1.5cm大) |
2回目以降(1ショット1.5cm大) |
2,000円 |
1,500円 |
Q-ruby |
直径1cm |
直径2cm |
1円玉大の追加ごとに |
5、000円 |
8、000円 |
2、000円ずつ追加 |
ソバカス(雀卵斑)の治療 |
MGL |
1回目(1ショット1.8cm大) |
2回目以降(1ショット1.8cm大) |
1,500円 |
1,000円 |
Q-ruby |
1個の皮疹(5mm大まで) |
500円 |
レーザーフェイシャル |
部位 |
1回目以降 |
2回目以降 |
顔全体 |
20,000円 |
17,000 |
顔の約半分 |
14,000円 |
11,000円 |
顔の部分 |
8,000 |
6,000円 |
# 顔の部分:両頬部の範囲
顔の約半分:両頬部+鼻+あごの範囲
Q&A よくある質問
治療は痛いですか?
レーザーは、メラニン色素のみを破壊するので、麻酔をしなくても輪ゴムではじかれる程度のチクチクとした痛みです。もちろん、麻酔の必要はありません。それでも痛みが心配な方には、当院で表面麻酔クリームを処方していますのでお申し出ください。
レーザーは体に悪くないのですか?
レーザーはX線や紫外線などと違い、有害な光線ではありません。FDA(米・厚生省食品医療品局)でも副作用の問題はないとの承認済みです。
レーザー脱毛ができない部分はありますか?
レーザー治療は全身に可能です。
しかし、顔面に比べ体や手足ではレーザー後の炎症後色素沈着が残りやすい傾向があります。そのため、顔面以上に遮光に務めて頂く必要があります。
毛穴のところがポツポツとシミになっているのですが、レーザー照射で色が濃くなりませんか?
レーザー光はメラニン色素に反応します。シミはメラニン色素による色素沈着ですから、当然反応し、色が濃くなるよりも、基本的に薄くなります。
照射にどれくらい時間がかかりますか?
非常にスピーディーです。
ニキビにはどれくらい効きますか?
ニキビや吹き出物は毛包内(毛の皮膚に埋まったところ)にたまる皮脂が根本的な原因です。レーザーは毛のメラニンに反応して、この毛包を熱変性させ可逆性に破壊するため、皮脂がたまりにくくなりニキビや吹き出物の発生を抑えます。しかし、赤くなり膿がたまったニキビには、まず通常の保険診療で炎症を取ることが先決です。適応は医師が判断いたします。
レーザー脱毛をする前に準備することがあれば教えてください。
シミに長く濃い毛が生えていると、レーザーに反応して燃えてしまいます。その際に皮膚に軽い熱傷を生じることがあるため、シミに一致して毛が生えているなら剃ってからの治療をお勧めします。男性では同様の理由であごや鼻下のシミには照射を控えています。
次の施術までに、どのぐらいの間隔をあけたほうがいいのでしょうか?
炎症が完全に落ち着いてから次の照射を行うことが重要です。従って、当院では3ヶ月ごとの照射をお勧めしております。多くの方は3回程度の照射が必要になります。5回程度照射しても効果がみられない場合は他の治療をお勧めします。レーザーフェイシャルでは1〜2ヶ月ごとの照射をお勧めしております。