色々なシミがありますが、その中で
一番治療がやっかいなのが肝斑です。
下にその特徴をまとめました。
好発年齢 |
30〜40歳代 |
性差 |
ほぼ女性のみ(まれに男性にも) |
誘因 |
妊娠、ピルで発症、増悪が多い。紫外線で増悪する。 |
特徴 |
左右対称性。境界は不明瞭。淡褐色の網状の色素斑 |
治療 |
トラネキサム酸、ビタミンC内服が無難。
レーザーやトレチノインで増悪することがある。 |
経過 |
治療は難しいが、年齢とともに徐々に薄くなることが多い。 |
・それまでほとんどシミがなかった方に、急に生じること。
・一番シミが気になる若い方に生じること。
・なかなか治療の決定打がないこと。
以上の理由で、
肝斑は治療の要望が多いシミですが、満足のいく治療ができないのが現状です。
肝斑の分類(私見です)
肝斑の現れ方は人それぞれと言われています。
必ずしも、下のイラストの@→Bと進行するわけではなく、いきなりBの分布で始まる方もおられます。印象では、Aから始まるタイプの方が一番多いのではないかと思います。
シミの種類と見分け方のページも参考にしていただくとわかりやすいと思います。
@ 頬骨部に限局して生じるタイプ
頬骨周囲にもやもやとした分布のシミが生じます。
日焼けの後から生じ消えなくなったと言われるときには、このタイプの肝斑が多いです。
このタイプの肝斑はレーザーで増悪しないことが多い印象があります。
もしかすると、増悪しない症例は実は対称性真皮メラノサイトーシスなのかもしれません。それくらい、鑑別は困難です。
A 下まぶたを避けて、両頬に帯状に広がるタイプ
一番多いタイプの肝斑と思います。
両頬に目頭から目尻まで横に広く分布します。
まぶたには最後までシミができないことが肝斑の特徴です。
また、鼻の上にもシミは生じないことが多く、初めから鼻にシミがあるときにはソバカス(雀卵斑)を疑います。
肝斑だけではなく、
老人性色素斑やイボも混在していることが多く、トラネキサム酸の内服が比較的有効であることが多いと思います。
B 両頬からこめかみ、口のまわりまでびまん性に認められるタイプ
日本人にはこのタイプの肝斑は少ないです。
症例として呈示されている写真もだいたい白人ものが多いです。
淡褐色のシミですが、濃淡があり一部には赤みも伴うことが多いです。
このタイプの肝斑にレーザーを照射すると、かえって濃くなることが多く、内服と外用治療のみで経過を見る方が無難です。
肝斑の治療について…基本はゼロリスク治療です。
肝斑の治療は
皮膚科医泣かせだと思います。
というのは、
積極的な治療が難しいからです。
老人性色素斑であれば、レーザーか塗り薬かどちらかの治療を呈示できますし、治療を行うことで悪化することはまれです。
しかし、
肝斑ではレーザーあるいは塗り薬のいずれの治療でもかえって濃くなるリスクがあります。そのはっきりとした理由はわかっていません。しかし、肝斑には隠れた炎症があり、レーザーやトレチノインはその炎症を助長するため、新しくシミを作るのではないかと推察されています。(これをわれわれの俗語では「肝斑が怒る」と言います。)
そのため、
治療はまず、増悪するリスクのない治療を勧めています。当院ではこれをゼロリスク治療と呼んでいます。
これらの治療では肝斑が増悪することはありません。
ただし、満足がいくほど肝斑が薄くなることもまれです。
ですが、まずは
3ヶ月はこの治療を継続するように説明しています。
ゼロリスク治療を継続することで目に見えるほどの効果はなくても、
肝斑の隠れた炎症はこの治療で落ち着いてくることがあります。
少しでも効果がある方は、ゼロリスク治療を長期間継続するとよいと思います。
その際は
トラネキサム酸は3ヶ月内服、1ヶ月休薬というサイクルで継続します。
ゼロリスク+ミックス療法について
タイプ@と
タイプAの肝斑に関しては、
ゼロリスク治療を3ヶ月以上行った後に
レーザーフェイシャルを3回行うとかなり経過がよいことがあります。さらに、3回目のレーザーフェイシャルを施行した後に粒状のシミがあれば、そこに限定してQスイッチルビーレーザーを追加すると有効です。
つまり、図示すると、
タイプ@とタイプAの肝斑については下のようなメニューで治療できます。
当院では、ゼロリスク+ミックス療法と呼んでいます。
紫外線の強い時期にはミックス療法はお勧めできません。
そのため、10月から3月に限定して、ミックス療法を行っております。4月から9月はゼロリスク治療のみを継続されることをお勧めします。
図ではわかり難いですが、
ゼロリスク治療はレーザーフェイシャル中やその後も継続された方がより効果的です。
残念ながら、
タイプBの肝斑の方にはお勧めできません。ゼロリスク治療のみに限定された方が無難です。
ゼロリスク+ミックス療法の実際の症例
ゼロリスク療法中の方にミックス療法を2回追加した時点での写真です。
患者さんの許可を頂き、掲載しています。
治療を開始する前の写真です。両頬部にびまん性の茶褐色斑が認められ、肝斑で典型的です。
ゼロリスク治療を7ヶ月継続した後に、ミックス療法を2回施行した時点です。
両頬部の肝斑はかなり薄くなっています。
#効果のあった症例を掲示しています。肝斑については、誰にも同じような効果があるとは限りませんので、お含み置きください。
肝斑??の時には試験照射を!
典型的な肝斑の症例にはゼロリスク治療が無難ですが、
実際には、
肝斑なのか、そばかすなのか、
対称性真皮メラノサイトーシスなのか、あるいは
肝斑なのか、老人性色素斑なのかを悩む症例が多数です。。
そういう悩む症例にはまずはゼロリスク治療を行うように勧めています。
ですが、それでは満足できない方も多数おられます。
そのときは、
Qスイッチルビーレーザーの試験照射をご検討ください。
ただし、あくまで試験照射ですので、
照射はごくごく小範囲に行います。
基本は、
最大で小指の爪程度です。(レーザー3発程度。)
照射部は一旦カサブタになります。10日程度でカサブタが脱落しその後は少しピンクになります。
その後、3ヶ月できれいになれば、Qスイッチルビーレーザーの照射は大丈夫という判断になります。
(これでも、100%の保証はできませんが、、、、)
逆に色素が濃くなるようなら、レーザー治療はまったく勧められないことになります。
試験照射については、私費のカルテを作成せず、格安で行います。
試験照射の費用 |
Qスイッチレーザーの試験照射(爪甲大まで) |
1、000円 |
試験照射は1カ所に限定して行います。
ハイドロキノンの外用をお勧めします。そのときには、別途1,750円が必要です。
試験照射の結果の判断は
6ヶ月後とお考えください。
試験照射の結果、レーザー治療の継続を希望されるときには、私費のカルテを作成し、所定の治療費を負担していただきます。
トレチノインクリームの外用の方がリスクが少ない?!
ここまで説明したように、
肝斑とは治療が難しいシミです。
そのうえで、よく聞かれることは、
「レーザーとトレチノインクリームとでは、どちらがよりリスクが高いのか?」ということです。
「どちらもリスクがあります。」とお答えしますが、強いてどちらかと言えば、経験的には
「圧倒的にレーザーの方がリスクは高い。」と思います。
トレチノインクリームも炎症を起こしますので、それが炎症後色素沈着を起こすことは十分考えられます。ただし、レーザーほど限局的な強い炎症ではないため、一旦生じた
炎症後色素沈着も時間とともに薄くなることが多いと実感しています。
肝斑の中に老人性色素斑があるような症例では、老人性色素斑のみにトレチノインクリームを外用する分にはあまり増悪のリスクは少ないように感じています。もちろん、個人差がありますので、
万人に保証できる治療ではありません。
リスクを承知の上で治療を希望されるときには、試してみてもよいと思います。
トレチノインクリーム治療の詳細は
トレチノインクリームのページをご参照ください。
そのほかの肝斑の治療
当院には機器がありませんが、
肝斑に対するレーザー治療として、
レーザートーニングという方法があります。
これは、QスイッチYAGレーザーの低出力での照射を繰り返すことで、肝斑を怒らせずにレーザー治療をしようという取り組みです。
その効果には賛否両論がありますが、一定の効果は期待できますし、何より肝斑に特化したレーザー治療はレーザートーニングのみです。
お試しになってもよいと思います。
ゼロリスク+ミックス療法の治療費
- ミックス療法は10月〜3月のみ行います。
- 当院でゼロリスク治療を受けられた方、あるいは治療中の方のみ治療できます。
- 最後のQスイッチレーザーについては必要があれば照射しますが、その判断は当院が行います。必ずしも希望に従えないこともあります。
- 個別にレーザーフェイシャルやQスイッチレーザーをうけられるよりかなりお得ですが、途中で中止されても返金はできません。
- レーザーフェイシャルの範囲は両頬に限定します。
- ゼロリスク治療は、通常の外来診療です。ハイドロキノン、ビタミンCローションの料金については各々のページをご参照ください。
- 下にはミックス療法の治療費を記します。
- 令和元年10月から消費税率の変更に伴い料金を改変しました。
ミックス療法の治療費 |
レーザーフェイシャル×3回セット |
16、000円 |
Qスイッチレーザーを追加(必要時) |
3、000円 |