2018年1月19日にデュピクセントが登場して以来、アトピー性皮膚炎の治療は完全に次のステップに移行した感があります。
現在、続々とアトピー性皮膚炎の分子標的薬が発売されています。
作用点の差はありますが、どの薬剤もとても効果は高いと思われます。
ただし、
「治療費が高い」
これについては共通ですね。
次のおのおのの説明をしていきます。
ミチーガ、アドトラーザ、イブグリースの写真
ミチーガです。
マルホ製薬から、2022年8月に発売されました。
アドトラーザです。
レオファーマから、2023年9月に発売されました。
イブグリースです。
日本イーライリリーから、2024年1/18に製造販売承認を取得されています。
実際に治療に使用できるのはまだ先の予定です。
→2024年5/31から使用できるようになります。
ミチーガ、アドトラーザ、イブグリースの作用機序
いずれも
サイトカインというタンパク質をブロックする薬剤です。
その意味では
デュピクセントと同じような薬剤です。
ただし、薬剤によってブロックするサイトカインが異なります。
デュピクセントのページにも記載している表を示します。
詳細は
デュピクセントのページを参照してください。
アトピー性皮膚炎を引き起こす主役は、
Th2というリンパ球です。 そのTh2リンパ球から分泌される
IL-4、IL-13、IL-5、IL-31などのサイトカインが皮膚のバイア機能の低下や、炎症の促進を引き起こし、その結果アトピー性皮膚炎が発症すると考えられています
ちなみに
デュピクセントはこのサイトカインのうち、
IL-4とIL-13をブロックする薬剤です。
それに対し、ミチーガ、アドトラーザ、イブグリースはブロックするサイトカインが少し異なります。
薬剤名 |
ブロックするサイトカイン |
ミチーガ |
IL-31 |
アドトラーザ |
IL-13 |
イブグリース |
IL-13 |
図で示すと、
このようになると思います。
ミチーガの投与法(2024年3月から適応年齢と疾患が追加になりました!)
- アトピー性皮膚炎のそう痒に対しては、6歳以上に投与できます。
- 結節性痒疹には13歳以上に投与できます。
投与法がやや複雑です。年齢と疾患によって異なります。
- 13歳以上の小児と成人のアトピー性皮膚炎
- 6歳以上13歳未満の小児 のアトピー性皮膚炎
- 13歳以上の小児と成人の結節性痒疹
- 初回に60mgを注射し、以降1回30mgを4週間間隔で注射します。
いずれにしても投与は4週間間隔です。
60mg製剤は
自己注射が認められていますので、
13歳以上の小児と成人のアトピー性皮膚炎については、3回目の注射から自己注射は可能です。
3本処方して3ヶ月毎に診察というスケジュールです。
30mg製剤は
自己注射が認められていないので、院内で4週間間隔で注射する必要があります。
ただし、ミチーガは注射液の扱いが少し難しいです。自身で注射器内の薬液を溶解してもらう必要があります。
下にミチーガは注射液の溶解方法のPDFを置きました。ご参照ください。
ミチーガの注射液の扱い方
ですので、現実的には1ヶ月毎に再診していただき、院内で私が注射する方がよいと思います。
- 費用について (ミチーガは2024年(令和6年)11月からも薬剤費が変わりません)
薬剤名 |
薬剤費 |
3割負担の方 |
ミチーガ 60mg |
116,426 円 |
34,930 円 |
ミチーガ 30mg |
67,112 円 |
20,130 円 |
これ以外に、診察料、処方料などがかかります。
アドトラーザの投与法
- 15歳以上で投与可能です。
- 2週間間隔で注射を行います。1回目に600mg(注射器4本)を皮下に注射します。2回目以降は300mg(注射器2本)を注射します。
注射の本数は多いですが、デュピクセントと同じスケジュールで治療します。
令和6年3月までは自己注射ができませんでしたが、4月以降デュピクセントと同様に自己注射が可能になりました。3ヶ月分までの処方が可能です。ただし、最初の2回は院内で注射します。
- 費用について (2024年(令和6年)11月から薬剤費が減額されました)
薬剤名 |
薬剤費 |
3割負担の方 |
アドトラーザ 150mg |
24.182 円 |
7,260 円 |
4本投与 |
96.728 円 |
29.020 円 |
2本投与 |
48.364 円 |
14.510 円 |
これ以外に、診察料、処方料などがかかります。
イブグリースの投与法
- 12歳以上で投与可能です。
- 2週間間隔で注射を行います。1回目と2回目に500mg(注射器2本)を皮下に注射します。3回目以降は250mg(注射器1本)を注射します。
- 経過が良好であれば、3回目以降は4週間間隔で250mg(注射器1本)を注射してもよいとされています。
まだ発売前ですので、詳細は不明です。
4週間毎の投与が認められているように、持続時間が長いことが特徴のようです。
- 費用について (2024年(令和6年)11月から薬剤費が減額されました)
薬剤名 |
薬剤費 |
3割負担の方 |
イブグリース 250mg |
61,520 円→50,782 円 |
18,456 円→15,235円 |
4本投与 |
246,080 円→203,128 円 |
73,824 円→60,938円 |
2本投与 |
123,040 円→101,564 円 |
36,912 円→30,469円 |
これ以外に、診察料、処方料などがかかります。
ミチーガの特徴
ミチーガがブロックする
IL-31は
そう痒に大きく影響するサイトカインです。
そのため、ミチーガは
そう痒に対して劇的な効果を持つとされています。
アトピー性皮膚炎には、皮疹はそれほどではないけれど、そう痒がとにかく強い方がおられます。かゆくて夜に眠れないと言われるような方です。
そのような患者さんにはよい適応ではないかと思います。
皮疹に対する効果は、デュピクセントに劣るのかもしれません。
アドトラーザ、イブグリースの特徴
アドトラーザ、イブグリースがブロックする
IL-13はアトピー性皮膚炎の発症に主に関わるサイトカインです。IL-13は
2型炎症を誘導することで、
皮膚バリア機能障害、そう痒、皮膚肥厚、易感染性を引き起こすといわれています。
ここで不思議なのは、先行品であるデュピクセントがIL-4とIL-13をブロックする薬剤なのに、何故後発されたアドトラーザ、イブグリースがIL-13だけブロックするのかということです。
後発されたなら、IL-4、IL-13、IL-5、IL-31の全てをブロックするくらいのスペックがあってもよいような感じを受けます。(たくさんブロックするからよいということでもありませんが)
この答えは今のところ持ち合わせていませんが、ブロックする機序が異なるようです。
IL-13のブロックの方法が異なり、従来薬よりも効果の持続時間は長いように書いてありました。
詳細がわかれば追記します。
ミチーガの投与に対する条件
デュピクセントの投与条件とは少し違うものがあります。
デュピクセントと同じ条件として、
@ 医師免許取得後2年の初期研修を終了した後に、
5年以上の皮膚科診療の臨床研修を行っていること。 という条件があります。
もちろん、
当院ではこの基準をクリアしていますので、問題ありません。
次に、患者側としては、
A アトピー性皮膚炎と診断されており、かつステロイド外用剤やプロトピック軟膏にて
4週間以上治療を継続している。
B
抗ヒスタミン剤あるいは抗アレルギー剤による内服治療を2週間以上継続している。
C
EASIスコア が10以上
Aはデュピクセントが
6ヶ月以上なのに対し、ミチーガでは
4週間以上と緩和されています。そのかわり、デュピクセントにはBの条件はありません。ミチーガのみの条件です。
CのEASIスコア はデュピクセントが
16以上なのに対し、ミチーガは
10以上に緩和されています。
加えて、ミチーガに特有の条件があります。
D そ
う痒のVAS値が50以上 OR そう痒NRSが5以上(13歳以上の小児と成人のみ)
E
かゆみスコアが3以上(小児、成人ともに必要)
この値を
患者さん自身に3日間つけてもらう必要があります。
アドトラーザの投与に対する条件
基本的にデュピクセントと同じと思います。
以下のページを参照してください。
デュピクセントの投与に対する条件のページ
アトピー性皮膚炎の症状が中等度〜重症の方に投与できます。
軽症の方には適応がありません。
イブグリースの投与に対する条件
基本的にデュピクセントと同じと思います。
以下のページを参照してください。
デュピクセントの投与に対する条件のページ
アトピー性皮膚炎の症状が中等度〜重症の方に投与できます。
軽症の方には適応がありません。
ミチーガ、アドトラーザ、イブグリースの投与をご希望の方は
いずれの薬剤も常備はしていません。(高価な薬剤ですので、デッドストックになっては困ります)
治療の開始が決まってから発注します。
受診時に投与条件を満たすかどうかの判断のため、
写真を撮って、皮疹のスコアリングをします。
ミチーガでは、かゆみスコアを3日間つけてもらう必要がありますので、スコアの判定シートをお渡しします。
最短で、2回目の受診時から投与が開始になります。