ニキビの治療を考える前に、まずおさらいをしてください。
ニキビには、3つの段階があります。
これをしっかり憶えておいてください。
@
白いニキビ
A
赤いニキビ
B
膿んだニキビ
詳しくは
「ニキビとは」のページをご参照ください。
ニキビの比率
ニキビの比率を図示すると、概ね下の図のような感じになります。
ほとんどのニキビは、白いニキビ、赤いニキビ、膿んだニキビが混在しています。
ただ、
思春期の初期だけは
白いニキビのみがおでこに認められる時期があります。俗に、「ニキビのはしり」と呼ばれる時期です。ですが、この時期に治療を希望される方はほとんどおられませんので、現実的には、
白いニキビと赤いニキビの両方が認められるようになってから治療が始まります。
逆に、白いニキビがなく赤いニキビと膿んだニキビだけが認められる部位があります。例えば、胸や背中です。体幹の毛穴には脂腺が少ないので、必然的に皮脂の分泌はそれほど増加しません。したがって、白いニキビはほとんどできずに、赤いニキビ、膿んだニキビが多発します。。
それから、成人のニキビも白いニキビよりも赤いニキビや膿んだニキビの方が目立ちます。
最初のニキビ治療としては、
白いニキビ、赤いニキビ、膿んだニキビが混在した状態から始まると思われて間違いないと思います。
治療の選択肢は大きく分けて2つです
ニキビの治療は、ざっくり言うと2つです。
@「赤いニキビ」「膿んだニキビ」の治療だけ行う。
A「白いニキビ」の治療も一緒に行う。
基本はAです。
Aを強くお勧めします。
ただ、@を希望されることがあるのも事実です。
次の項で述べますが、
「白いニキビ」の治療には、大なり小なりの副作用を伴うからです。
それが嫌な方は、どうしても「白いニキビ」の治療が難しくなります。
では、その各々について説明します。
「赤いニキビ」「膿んだニキビ」の治療だけ行う
これは治療としては単純です。
なぜなら、赤いニキビや膿んだニキビの治療は目新しいことではないからです。
20年も30年も前より、赤いニキビには抗生剤の内服や外用が処方されてきました。そして、現在もやはり
抗生剤の内服と外用が赤いニキビの治療の主役です。
ですので、
「赤いニキビ」「膿んだニキビ」の治療だけ行うということは、ニキビの炎症のものとになっている、
ニキビ菌を退治することです。
外用剤としては、次の3つが有名です。
ダラシンTゲル1%
クリンダマイシンという名前の抗生剤のゲルです。
アクアチムクリーム1%
ナジフロキサシンという名前の抗生剤のクリームです。
ゼビアックスローション2%
オゼノキサシンという名前の抗生剤のローションです。
この中では一番新しい外用剤で、1日1回の外用で効果がある点が
上の2剤と異なります。
これらの外用剤はいずれも抗菌薬ですので、
白いニキビには効きません。
外用法は、ニキビの部分だけに
ピンポイントで外用すれば大丈夫です。
かぶれない限り、副作用はありません。
中等度以上のニキビでは、抗生剤の内服も併用してもらいます。
ミノマイシン、ルリッド、クラリスの3つのいずれかを内服することが多いです。
また、効果によっては漢方薬も併用します。
ここは、
ニキビの漢方薬治療のページを参照してください。
「白いニキビ」の治療も一緒に行う
ここ7年くらいでニキビの治療はめざましく進歩しました。
何が変わったかというと、
「白いニキビ」の治療ができるようになったことです。
従来は、
「しっかり顔を洗う」とか、クレアラシルのように
「イオウの入った外用剤をつける」などの治療しかありませんでした。これらの治療は、皮ふの脂を取り除く効果はありますが、毛穴につまった脂までは取り除けません。
つまり、これらの治療で「白いニキビ」を治療するには限界がありました。(しないよりはましだとは思います。)
その後、
ケミカルピーリングが治療に加わりました。これは、弱い酸を皮ふに塗ることで角質を溶かして毛穴からの脂の排出を促すというものです。加えて、くすみや小じわにも効果があり、美容と併せてニキビの治療に一役かいました。しかし、効果を持続させるにはケミカルピーリングを継続しなければならず、保険が効かず治療費が高いため、中高生などの思春期のニキビ治療に用いることはなかなか困難でした。
そして、
革命的な治療が始まったのが、
2008年にディフェリンゲル0.1%が処方できるようになってからです。
ディフェリンゲル0.1%
ディフェリンゲル0.1%は、男性ホルモンの影響で厚くなった毛穴の皮ふを薄くして、
毛穴を広げる作用があります。
毛穴に脂の抜け道を作ることで、毛穴につまった
脂を外に出すことができます。
ディフェリンゲル0.1%については当院のホームページにも詳述していますので、
ここを参照してください。
このホームページを作製した2013年の時点では、「白いニキビ」に効果がある外用剤はこのディフェリンゲルのみでした。
しかし、その後に「白いニキビ」に効果がある外用剤が相次いで発売になりました。
現在では、ディフェリンゲル0.1%を含めて
4剤の外用剤があります。
ベピオゲル
デュアックゲル
エピデュオゲル
これらの4剤です。
「4剤もあるのか!」と思われるかもしれませんが、
実は2剤しかありません。
ディフェリンゲル0.1%とベピオゲルは全くの別物ですが、
デュアックゲルはベピオゲルにダラシンTゲル1%が混合されたものです(厳密には、デュアックゲルの方がベピオゲルより成分が濃いですが)。
エピデュオゲルは、ディフェリンゲル0.1%とベピオゲルが混合されたものです。
つまり、成分と効能で考えると、
ディフェリンゲル0.1%とベピオゲルの2つが存在すると理解してもよいと思います。
図にして示すと、
ですので、ディフェリンゲル0.1%とベピオゲルの違いを理解して頂く必要があります。
表にまとめると、
製剤名 |
白いニキビへの効果 |
赤いニキビへの効果 |
使用部位 |
妊婦
授乳中 |
ディフェリンゲル |
ある(強) |
ない |
顔面のみ |
使用できない |
ベピオゲル |
ある(中) |
ある |
制限なし |
使用できる |
大きな違いは、
ディフェリンゲル0.1%は白いニキビにしか効果がないと言うことです。
対して、
ベピオゲルは、白いニキビ、赤いニキビの両方に効果があります。ただし、
白いニキビに関して言えば、ディフェリンゲル0.1%の方が効果は強いとされています。
ならば、
両方を外用すればよいのではないかという考えでできた薬がエピデュオゲルです。
エピデュオゲルにはディフェリンゲルとベピオゲル両方の成分が含まれます。
では、
最初からエピデュオゲルを塗ればそれでよいではないかと言うことになりますが、そう単純ではないのが次の問題です。
製剤名 |
刺激性の副作用 |
アレルギー性のかぶれ |
ディフェリンゲル |
ある(ほぼ必発) |
ない |
ベピオゲル |
ある(ほぼ必発) |
ある(ときどき) |
ディフェリンゲル0.1%、ベピオゲルともに、外用して2週間前後に皮ふが
赤くなったり、ガサガサになったり、ヒリヒリしたりの副作用が生じます。これはほぼ必発と思われてよいです。
写真はディフェリンゲル0.1%の公式サイトから転載改変しています。
個人差がありますが、写真のようなガサガサで赤くなるといった副作用が認められます。この
刺激性の副作用は通常2-3週間で改善してきます。
しかし、
ベピオゲルで生じるアレルギー性のかぶれは外用を中止しない限り改善しません。
このため、最初からディフェリンゲル0.1%とベピオゲルの両方を外用すると(あるいはエピデュオゲルの外用でも同じです)、
刺激性の副作用なのかアレルギー性のかぶれなのかわからなくなり、その後の治療が難しくなります。
4つある外用剤のうち、
ディフェリンゲル0.1%の外用から開始するのはこういった理由です。
実際の治療の流れ
白いニキビだけの治療を希望される方は少ないと思いますが、
一番有効なのはディフェリンゲルです。
ただ、外用による刺激性の副作用がありますので、それが嫌な方はしっかり洗顔するか、イオウ・カンフルローションのようなイオウ製剤を外用するとよいでしょう。
白いニキビと赤いニキビ混在する最も一般的なニキビの治療です。
まずは
ディフェリンゲルと抗生剤の外用で加療します。膿疱の程度によって、抗生剤内服と漢方薬も検討します。それで
効果が不十分なら、抗生剤の外用から
ベピオゲルあるいはデュアックゲルに変更します。ディフェリンゲルは
最低3ヶ月は継続しなければ効果が発揮できません。
ディフェリンゲル+ベピオゲルあるいはデュアックゲルで調子がよければ、
エピデュオゲルに変更することもできます。
赤いニキビのみという状態はやや特殊なニキビです。
胸、背中など顔面以外のニキビは赤いニキビのみのことが多いです。また、あごや首に生じる
成人のニキビでも、白いニキビは目立たず赤いニキビが主体になります。
赤いニキビのみの時は、刺激性の副作用、かぶれともに嫌な方は
抗生剤の外用と内服で加療します。
ただし、効果は劣ります。
副作用が大丈夫な方は、
ベピオゲルあるいはデュアックゲルで加療します。抗生剤の内服や漢方薬を併用するとなお効果的です。
これらの治療を行っても改善しないときには、女性であれば
ホルモン療法を検討できますが、これは保険外の治療になります。ホルモン療法については
ニキビのホルモン療法のページを参照してください。男性であれば、
レーザーによる脱毛を選択することがあります。これは、
ニキビのレーザー治療のページを参照してください。
以上、長い説明になりましたが、院長の経験的なニキビ治療のあらましでした。
当院を受診される前には、是非ともご一読をお願いします。