人工的にかぶれを起こして発毛を促す治療です。
かぶれは
SADBEという物質で誘発します。そのため、別名
「SADBE療法」と呼ばれたり、カナカナ読みで
「サドベ療法」と呼ばれたりします。
日本皮膚科学会の提唱する治療ガイドラインでは
推奨度Bに分類されます。(詳細は
ここを参照ください。)
なぜ、かぶれが起こると発毛するのでしょうか?
あくまで推論ですが、脱毛が起こっている部位では、毛根周囲にT細胞と呼ばれる免疫細胞が集まっています。その
T細胞が毛根にある毛を作る細胞(毛母細胞)を破壊し、その結果脱毛しているのではないかと考えられています。
局所免疫療法は皮ふの表面にかぶれを起こすことで、これらの
T細胞を皮ふ表面に呼び寄せ、毛根の破壊を食い止めるといわれています。
もちろん、推論ですので、確証はありません。
しかし、臨床上、高い発毛効果が認められていることは間違いありません。
その実績をかわれて、ガイドラインではステロイド局注とならび
推奨度Bに分類されたものと思います。
残念ながら、いくつかの問題点もあります。
その一つは、保険適応がありません。
私費での治療となります。
また、人工的にかぶれをおこす目的で使用するSADBEという物質は
医薬品ではありません。
SADBEとは?
SADBEとは
スクアリック酸という物質で、コピー機やレーザープリンターなどの電子写真感光体の色素染料のひとつです。
皮膚に塗布することで
人工的に接触皮膚炎(かぶれ)を生じさせることができます。
薬剤ではありませんが、皮膚科では30年前から
円形脱毛症の治療として使用されてきた経緯があり、安全に使用できる物質です。
治療の流れ
@まず 、SADBEを体におぼえさせます。(これを「感作させる」といいます。)
1%に薄めたSADBE溶液を染み込ませたテスターを体に貼ります。普通は
上腕の内側に貼り付けて、 2日間待ちます。
テスターに1%SADBE溶液を染み込ませています。
上腕の内側に貼付しました。(ちなみに写真は院長です。)
貼付して2日後です。貼付部に紅斑が認められます。かゆみと痛みが少しあります。
これで感作が成立です。
円形脱毛症の治療に使用するときには、感作のためのテスターを
脱毛部位に貼付することがあります。これは患者さんの希望に従います。
A感作が成立して2-4週後からSADBEを脱毛部位に外用します。
SADBEに対して感作が成立すると、全身のどこにSADBEを外用してもかぶれをおこすようになります。したがって脱毛部位にSADBEを外用すると脱毛部位にかぶれが生じます。このかぶれによる免疫反応で発毛を促します。
ただし、感作に使用したSADBEと同じ濃度のものを外用すると強いかぶれを生じますので、脱毛部位に外用するSADBEはもっと薄めたものから使用します。
当院では、2%〜10
-12%までの15段階でSADBE溶液を準備しています。
円形脱毛症ではだいたい10
-12から外用を開始します。
自分用の筆を購入してもらい、当院に預けてもらいます。
B毎週1回 SADBEを脱毛部位に外用します。
週に1回来院して頂き、脱毛部位にSADBE溶液を単純に外用します。ガーゼでは覆いません。
かぶれの程度を確認しながら、徐々に濃度の濃いSADBE溶液に変更します。
通常、10
-2〜1%程度の外用で継続することが多いです。
有効性は?
もともとは30年位前に新潟大学がこの治療を発表し、当時はその発毛効果に驚いたものです。
その後、広島では県立広島病院皮膚科がいち早くこの治療を取り入れました。
院長は平成7年に研修医として県立広島病院に勤務しましたが、当時は中四国地方から多数の患者さんが治療目的に来院されていました。
さて、前置きが長くなりましたが、日本皮膚科学会のガイドラインで最高位の推奨度Bに分類されていますので、発毛効果は高い治療と言えます。
ただし、個人差がありますので、誰にでも発毛するわけではありません。
有効性は、実際治療を受けてみないとわからないと思います。
治療の前に理解して頂くこと
- 保険で認められた治療ではありません。(治療は承諾書を頂いた上で行います。)
- 自費の治療になります。自費のカルテを作製した上で治療を行います。
- 局所免疫療法を施行中には、外用剤ので治療は行いません。内服は、セファランチン、グリチロン、漢方薬については継続しても問題ありません。ステロイド内服は中止します。
- 人工的にかぶれをおこしますので、かぶれにともなう様々な副作用を生じる可能性があります。
- 脱毛部にな段階的に濃いSADBEを外用していきますが、突然強いかぶれを生じることがあります。
- 脱毛部のかぶれのみではなく、顔面にもかぶれを生じることがあります。特に夏には、汗でSADBEが顔に流れて、顔面にかぶれを生じることがよく起こります。
- さらに、全身に湿疹が生じることがあります。これを自家感作性皮膚炎と呼びますが、頭皮のかぶれが全身に影響して湿疹が生じることです。一時的にステロイド内服で加療します。
- 感作のためにSADBEを貼付した部位に水ぶくれや潰瘍(皮膚の傷)が生じることがあります。また、治った後に色素沈着が残ります。
- イボにSADBEを外用する過程で、感作のためにSADBEを貼付した部位に再度炎症を起こすことがあります。
局所免疫療法の治療費
注意点
- 保険は効きません。
- SADBE外用の費用は、1受診あたりです。外用部位の数にはよりません。
- 下記料金は本ページ作製時の金額です。今後、変更になる可能性があります。
|
治療費 |
初回(SADBEの感作を行う) |
1,000円 |
SADBEの外用(1受診あたりです) |
1,000円 |
Q&A よくある質問
必ず発毛しますか?
高い有効性が報告されていますが、100%の効果を保証できるものではありません。当然、効果がないこともあり得ると思います。
入浴してもいいですか?
感作のためにSADBE含有テスターを貼付したときは、同部を濡らさないようにして頂ければ入浴は可能です。治療のためにSADBE溶液を外用したときは、その日は濡らしてはいけません。洗髪をしなければ入浴は可能ですが、発汗して外用したSADBEが流れないように注意してください。
全身に悪影響があることはありませんか?
理論上、SADBEにかぶれやすくなりますが、SADBEは通常の生活で皮ふに触れることはありません。ですので、仕事などでSADBEに触れることがある人でない限り問題はないと思われます。また、感作は一生続くものではありません。ですので、小児が治療を行ったとしても、将来的にSADBEにかぶれ続けることはないと思われます。