エキシマレーザーとは、
希ガスやハロゲンなどの混合ガスを用いてレーザー光を発生させる装置です。
希ガスはアルゴン、クリプトン、キセノンが、
ハロゲンはフッ素、塩素が一般に使用されます。
これらの組み合わせの中で、
キセノンと塩素の組み合わせで生じるレーザーがXeCl - 308 nmという波長になります。この波長のエキシマレーザーを発生する装置が、308エキシマシステムです。。
光線療法については、
光線療法(ナローバンドUVB)ページで詳しく書いています。こちらを参照して下さい。
その中でも記載していますが、
紫外線の中で304-313nmの領域の波長に治療効果があることがわかっています。ナローバンドUVBはその中の309-313nmの波長を発生する装置ですが、
エキシマレーザーは308nmの波長のみを発生する装置です。
エキシマレーザーについては、2006年 Photo Madex 社が308nm Excimer Lamp ( VTRAC ) を発売し、2007年に日本にも導入されました。この装置は、治療したい部位のみに照射できる
ターゲット照射型ですので、限局性の病変に対しては効率がよく、ナローバンドUVB照射療法よりも桁違いに短い時間で高い効果が認められました。
この装置をさらに小型化し、治療効率を高めたものが308エキシマシステムです。
308 エキシマ システムについて
当院では、平成27年9月に導入しました。
ハンディタイプです。
このキューブの先端からエキシマレーザーが照射されます。周囲も透明なので照射しながら患部を確認できるため、重複照射を極力減らすことができます。
通常は、
150mJと照射量から照射を開始します。
(150mJの照射量とは、30人に照射して1人に反応性の赤みがでる量と設定されています。)
反応を見ながら、徐々にエネルギーを増量していきます。
照射は、まず1-2回/週で行うことが勧められています。効果が認められれば、徐々に間隔を開けていってもよいと思います。
治療時間は、治療する箇所によります。
150mJを照射するのに、約3秒かかります。
例えば、10カ所照射するなら、照射にかかる時間は30秒です。もちろん、部位を変えたりする時間も必要ですので、数分は余分にかかりますが、それにしても短時間で治療が可能です。
308エキシマシステムが有効な疾患
ナローバンドUVBと適応疾患は同じです。
<308エキシマシステムが保険適応になる疾患>
・尋常性乾癬
・アトピー性皮膚炎
・尋常性白斑
・掌蹠膿疱症
・類乾癬
と決まっています。
※令和2年4月の改訂で
・円形脱毛症にも保険が適応となりました!
それ以外にも、
・結節性痒疹
にも有効とわかっていますが、残念ながら保険適応がありません。
308エキシマシステムの治療回数
もちろん疾患の種類や個人の体質によって異なりますので、平均的な治療回数だと思って下さい。
疾患 |
治療に要する照射回数 |
1週間の照射回数 |
尋常性乾癬 |
10 回 |
1〜3回 |
尋常性白斑 |
25 回 |
1〜2回 |
掌蹠膿疱症 |
15 回 |
1〜2回 |
アトピー性皮膚炎 |
15 回 |
1〜3回 |
円形脱毛症 |
12 回 |
1 回 |
治療症例
当院では導入してまだ短期間ですので、呈示できる症例はありません。
308エキシマシステムのメーカーから提供された写真を呈示します。
<爪の尋常性乾癬>
治療前です。爪の乾癬は治療が難しい疾患です。
308エキシマシステムの治療中です。
308エキシマシステムの治療後です。経過は非常に良好です。
<掌蹠膿疱症>
手のひらと足の裏に膿疱と炎症をくり返す疾患です。
308エキシマシステムの照射により、膿疱は消失しています。ガサガサはまだ続くようです。
<尋常性白斑>
尋常性白斑は白なまずともいわれる、色が抜ける疾患です。
308エキシマシステムの照射により色素が新生していることがわかります。
ほぼ白斑は消失しています。経過は良好です。
<アトピー性皮膚炎の痒疹>
アトピー性皮膚炎は通常全身に皮疹を生じる疾患ですので、全身の治療ならナローバンドUVBの照射の方が適切です。
ナローバンドUVBについては
光線療法(ナローバンドUVB)のページを参照してください。
エキシマランプが有効なのは、同部位を掻き続けて皮ふが硬く盛り上がった皮疹(痒疹と呼びます)です。特に小範囲に限局した皮疹ではエキシマランプがかなりよく効きます。
アトピー性皮膚炎の痒疹です。
繰り返し掻いた部位に一致して、盛り上がった皮疹が認められます。皮膚科用語では、苔癬化した皮疹といいます。
痒疹の拡大写真。
痒疹の拡大写真。
このような皮疹は薬を塗ってもなかなか改善しません。しかし、308エキシマシステムが有効です。
照射面積は狭いため、皮疹の部位のみエキシマランプを照射し、それ以外は外用を継続するとよいと思います。
実際の小児例です。
腹部に掻破した皮疹と一部潰瘍形成が認められます。一番強いステロイドの外用剤(デルモベート軟膏)を使用して抗アレルギー剤も内服していますが、これ以上改善しません。(子供は掻くなと言っても掻かないようにはできませんからね。)
エキシマランプを週に1回つづ計6回照射しました。痒疹は軽快していることがわかります。
どうしてもエキシマランプの照射野に一致して茶色の色素沈着(日焼と同じ)が残ります。紫外線なので、これはやむを得ません。
同じ症例です。同様に手首や中指に痒疹が続きます。
エキシマランプを週に1回つづ計6回照射しました。痒疹は軽快しています。
308エキシマシステムの治療費
健康保険は適応されます。
以下の金額は3割負担の場合です。
初再診料、処方料などは別途必要です。