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西風新都のこころ皮ふ科クリニックです。皮ふ科一般の治療と皮ふ外科、レーザー治療を行っています。

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小児へのデュピクセントの投与dupixent for child

デュピクセントが小児にも投与できるようになりました。

アトピー性皮膚炎の注射薬であるデュピクセントがとうとう小児にも適応を拡大しました。
15歳以上のアトピー性皮膚炎には2018年1月19日に投与が可能となり、当院では積極的に治療に取り組んできました。

しかし、なにぶん高額治療であることから、小児医療の補助がなくなる年齢への投与はなかなか厳しい状況でした。
しかし、2023年9月から生後6ヵ月から全年齢のアトピー性皮膚炎に適応を拡大しました。
つまり、これまで掻くことをコントロールできなかった小児にも積極的に投与が可能です。

これは、重症なアトピー性皮膚炎のお子さんをもつ親御さんには朗報と思います。
ただし、注射薬です。
子どもがすんなり注射をさせてくれるかどうかが一番の問題ですね。



小児用に200mg製剤が追加されました。

小児用だからといって薬剤が違うわけではありませんが、投与量は体重に応じて減量します。
そのため、よりきめ細やかに投与できるように、200mg製剤が追加されました。(実際は2023年12月から使用できるようです。)





当面、ペンタイプは発売されないようです。



投与条件について

小児に適応拡大されたからといって、誰にでも使用できる薬剤ではありません。

まず、
@既存の治療で効果が不十分な中等症〜重症のアトピー性皮膚炎患者
つまり、ステロイド外用や免疫抑制剤外用でコントロールできている患者さんには投与できません

A生後半年以降から投与できます。

B多額の費用が負担できる方、あるいは小児医療の補助が受けられる方
治療費については下に正確に記載しますが、1ヶ月に数万円の治療費がかかります。小児医療の補助が受けられる方は、小児医療の適応となります。

C保護者が自宅で注射できる方
最初の2回は院内で注射しますが、それ以降は自宅で保護者(可能なら子ども自身)が注射をすることになります。2週間毎に通院して注射することも可能ですが、当院では自宅での自己注射を指導しています。

D外用治療も併用できる方
注射のみに頼らず外用も継続することが明記されています。




デュピクセントの機序について

小児の治療であっても、当然薬剤の作用機序は変わりません。
この薬剤の機序を理解するには、それなりの医学的知識が必要です。

ですので、難しいことは記載しません。
しっかりとした説明を読みたい方は、デュピクセントのサイトをご参照ください。動画もあります。
デュピクセントの特性 https://www.dupixent.jp/property/01/

簡単に言うと、
アトピー性皮膚炎の皮疹やかゆみの原因になっているものを選択的にブロックする薬剤です。
具体的には、IL-4IL-13というタンパク質の作用をブロックしています。

これらのタンパク質がどのようにアトピー性皮膚炎に関わっているかというと、下の図を見てください。



薬剤の説明の図をぐっと簡略化しました。
アトピー性皮膚炎を引き起こす主役は、Th2というリンパ球です。
そのTh2リンパ球から分泌されるIL-4、IL-13、IL-5、IL-31などのサイトカイン皮膚のバイア機能の低下や、炎症の促進を引き起こし、その結果アトピー性皮膚炎が発症すると考えられています。

では、
デュピクセントの効果を下に示します。



デュピクセントはサイトカインのうちIL-4とIL-13をブロックすることで、アトピー性皮膚炎の発症や増悪を押さえることができます。
また、Th2というリンパ球に分化する過程を抑制することもできます。
すなわち、Th2リンパ球の上流と下流でこの働きを抑制することができる薬剤と言えます。



デュピクセントの実際の投与について

小児のデュピクセント投与が成人と大きく異なるのは、投与量、投与間隔です。
体重別に細かく設定されています。

下の表をご参照ください。

注射部位は、両上腕(二の腕)、腹部、両大腿(ふともも)です。



では、個別に説明します。

体重5kg〜15kgの投与ステジュール



1ヶ月間隔で注射を行います。
1ヶ月毎の治療ですので、基本的に院内で注射します。
使用する薬剤はデュピクセント200mgです。2023年12月以降に薬剤が供給される予定です。


体重15kg〜30kgの投与ステジュール



1ヶ月間隔で注射を行います。
1ヶ月毎の治療ですので、基本的に院内で注射します。
使用する薬剤はデュピクセント300mgです。すでに薬剤が流通していますので、いつでも治療は可能です。


体重30kg〜60kgの投与ステジュール



2週間間隔で注射を行います。
そのため、最初の2回は院内で注射し、その後は処方箋で注射薬を処方し、自宅で注射してもらいます。
通院は2ヶ月毎です。
使用する薬剤はデュピクセント200mgです。2023年12月以降に薬剤が供給される予定です。


体重60kg以上の投与ステジュール


成人の投与法と同じです。
2週間間隔で注射を行います。
そのため、最初の2回は院内で注射し、その後は処方箋で注射薬を処方し、自宅で注射してもらいます。
通院は3ヶ月毎です。
使用する薬剤はデュピクセント300mgです。すでに薬剤が流通していますので、いつでも治療は可能です。



デュピクセントの投与に対する条件

デュピクセントはこれまで治療に苦労した重症アトピー性皮膚炎の患者さんに一筋の光明が差す、画期的なものですが、それだけに投与においてはたくさんの条件が付けられています。

まず、われわれ医療側としては、
@医師免許取得後2年の初期研修を終了した後に、5年以上の皮膚科診療の臨床研修を行っていること。
という条件があります。
もちろん、当院ではこの基準をクリアしていますので、問題ありません。

次に、患者側としては、
A成人アトピー性皮膚炎と診断されており、かつステロイド外用剤やプロトピック軟膏にて6ヶ月以上治療を行っている。(あるいは、副作用や過敏症のため、これらの外用療法が継続できない)
という条件があります。
でも、普通に考えると、この条件をクリアできていない患者さんにデュピクセントを投与することはないと思います。

そして、最後にちょっと大変な条件があります。
B次の3つの項目を判定して、一定のスコア以上である必要があります。

 ○IGAスコア が3以上
 ○全身又のEASIスコア が16以上
  あるいは頭頚部のEASIスコア が2.4以上、7歳以下では4.8以上
 ○体表面積に占めるアトピー性皮膚炎病変の割合(%)が10%以上

これらのスコアは、医師が皮疹の状態を見て判定します。
ですので、患者さんにはこのスコアを気にして頂く必要はありません。
軽症のアトピー性皮膚炎には投与しないようにという、われわれに対する戒めだと思います。



デュピクセントの治療費  

成人での一番の問題は治療にかかる費用でした。
しかし、小児の多くは医療補助を受けることができますので、負担金は少ないと思います。

小児の医療補助については、各市町村で負担金や補助の期間が異なりますので、各自でご確認ください。

ちなみに広島市、廿日市市では中学生以降の医療補助はありません。(2023年の時点)
そのため、60kg以上であれば下の表のような負担金になります。
3割負担の方の負担金 月あたりの負担される費用(概算)
初月のみ(月に3本注射) 52,900円(2022年8/1から減額)
それ以降(月に2本注射) 35,300円(2022年8/1から減額)

※年収により高額療養費制度の対象になることがあります。
高額療養費制度の対象になる可能性があるのは、
@ 年収 370万円未満
A 住民性非課税者
です。

中学生未満では、どの自治体でも小児医療の補助が受けられると思いますが、所得制限については個々に異なりますので、最寄りの自治体で確認をお願いします。



デュピクセントの自己注射について 

平成31年6月から待望の自己注射が認められています。
最大6バイアル(およそ3ヶ月分)まで処方できます。(各体重により期間が異なります)
院内では注射せず、内服薬や外用剤と同様に処方箋をお渡しします。調剤薬局に処方箋を提出し、デュピクセントを受け取って頂くことになります。

自己注射をするためには、院内で最低2回の指導を受けて頂く必要があります。
その上で、処方日には下記の指導料を負担して頂きます。(導入初期加算は自己注射開始後3ヶ月に限り算定))

指導料 3割負担の方の負担金
在宅自己注射指導管理料(1以外の場合)(月27回以下) 1,860円
導入初期加算(在宅自己注射指導管理料) 1,740円
これも小児医療の補助の適応ですので、補助がある方には負担は少ないと思います。





デュピクセントの自己注射の方法 

直接、皮ふに注射する方法と補助具を使用した方法があります。

@直接注射する方法

自分で注射するときには、腹部が太ももになります。誰かに打ってもらうようなら、二の腕でも大丈夫です。いずれも簡単ですが、皮ふに針を刺すことができるかどうかがポイントですね。


12歳未満の小児の患者さんには、必ず皮膚をつまんだ状態で注射し、注入が完了するまでつまんだ手を離さないでください。


A補助具を使用する方法

マイデュピという補助具にデュピクセントをセットして注射します。
針を直接目にせず注射できるというメリットがあります。


 実際の補助具です。














小児に投与する際は、保護者が注射されることが多いと思いますので、
@直接注射する方法に慣れて頂く方が現実的と思います。




Q&A よくある質問

治療はいつから可能ですか?

デュピクセント200mgが2023年12月に発売される予定ですので、それ以降になると思います。初診の方は、まず診察して皮疹をスコア化します。投与はその次の受診時になります。

治療は受診した当日に受けられますか?

受診した当日には、初診の方ならこれまでの治療期間や治療内容を伺い、皮疹の程度をスコア化しなければなりません。その上で適応と判断されれば、投与することになります。
そのため、当面は初診時には投与できません。次の受診時からの投与になります。

また、薬剤は冷蔵庫から出した後に室温で45分以上置いておく必要があります。つまり、来院後最短でも45分は待って頂く必要があります。

何回くらい治療すれば、効果が実感できますか?

1回の注射後2週間で効果が認められます。3ヶ月経過したときには、ほとんどの症例で皮疹、そう痒ともに明らかな改善が認められます。

治療はいつまで行うのでしょうか?

いつまでデュピクセントを続けるべきかについて明確な指標はありません。
基本的に、炎症とそう痒がおさまり、改善が実感できるまでは継続します。
6ヶ月を目安として、よい状態が維持できるようならデュピクセントの投与を中止できるとされています。もちろん、デュピクセントを中止後も外用剤は継続する必要があります。

もし、外用のみで皮疹がコントロールできなくなったときには、デュピクセントを再開することもできます。

治療費はクレジットカードで払うことはできますか?

クレジットカードが使用できます。高額治療になる方は、遠慮なく申し出てください。

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