爪が周囲の皮ふにくい込んで生じる炎症です。長期間続くと出血しやすい肉芽組織が生じます。この肉芽組織からの汁で周囲の皮膚がただれ、さらに爪も柔らかくなるためさらに変形が起こりくい込むという悪循環が生じます。
一般的な陥入爪です。長く続くと、このような赤い肉芽組織が続きます。すぐに出血し、時には悪臭を伴います。
「陥入爪」の簡単な治療方法
どんな治療でも、皮ふに食い込んだ爪を皮ふからできるだけ離してやることが必要です。
一番簡単な方法は、テーピングで皮ふを引っ張って爪から離してやることです。これは自宅でも可能な方法です。
テープを爪が食い込んだ皮ふに貼って、その後らせん状にねじりながら引っ張りつつ趾にテープを貼ります。テープの張力で皮ふを爪から離すことが目的です。らせん状にするのは、直線状に一周巻いてしまうと皮ふの血流が悪くなることがあるからです。
爪を切りすぎて生じたような一過性の陥入爪であれば、このテーピングで十分改善が期待できます。
「陥入爪」の手術方法
ある程度慢性的な陥入爪になると、テーピングでは改善しません。
とりあえず、痛みと肉芽組織を軽快させるには難しい治療は必要ないと思います。結局は爪が「スイバリ」のように皮膚に刺さっているわけですから、これを取ることが一番有効です。
陥入爪の簡単な手術療法
写真のように爪をまっすぐ根本まで切ってしまうことが一番有効です。もちろん麻酔をして行います。決して斜めに切ってはいけません。ただし、爪は約半年でもとの長さまで伸びてきます。そのとき再発することがありますが、意外と少ないです。
まず、趾の基部に2か所麻酔の注射を行います。約15分待つと趾全体がしびれてきます。それから、爪切りで爪を甘皮のところまで切開します。次に、形成剪刀で取り除く爪の周囲を剥離します。爪母もまっすぐ切開し、爪を引き抜きます。
手術の時間は5分程度です。
当日は包帯で巻いて、圧迫します。翌日は来院して、交換します。
止血ができていれば、翌日から入浴できます。入浴後に、自分でゲンタシン軟膏を外用してもらいます。約10日でガーゼが必要なくなります。
通常、術後1日から痛みがなくなり、それまでの苦痛から解放されます。
切除してみると、かなりの大きさの爪がくい込んでいることがわかります。
爪を切る以外に、このような巻き爪を改善させる方法はないと思います。
爪切り後の状態です。くい込む爪がなくなっていますので、当然陥入爪は改善しています。
しかし、このままではまた爪は生えてきます。その時再発するかどうかは症例によります。意外と再発しない方も多いです。
新しく爪が生えていることがわかります。だいたい、2ヶ月で爪が見えてきます。
この爪がまた陥入爪を生じることがあります。
その時は、同じことを再度繰り替えすか、根治的な治療を行うことになります。
陥入爪の根治的な手術療法
根治的な治療を行うということは爪を生えないようにすることになります。
爪には爪母というところがあり、そこで爪が作られています。ですので、この爪母を切除したり、薬で変性させたりすることで爪が生えなくします。
紫のところが爪母です。
陥入した爪を切除した後、この爪母も切除することが根治術です。フェノールで行う方法もありますが、フェノールは組織を腐食させるため正常な皮ふも腐ってしまうことがあり、当院では行いません。
写真はグロテスクなので、シェーマを示します。
局所麻酔後、皮ふをメスで切開し、爪母を露出します。爪と爪母を一塊にして切除します。止血をした後、皮ふを縫合します。時間は約30分かかります。
当日はそれなりに痛みがあります。翌日来院してもらい、止血を確認します。その後はゲンタシン軟膏を外用してもらいます。2週間後に抜糸です。
根治術を行うと、爪の幅は少し狭くなります。これは一生変わりません。
陥入爪の特殊な手術療法
多くの陥入爪はこの爪切りで解決しますが、中にはそれでは対処できない陥入爪があります。その代表的なのは、U型に変形した陥入爪です。別名、ハサミ爪ともいいます。
このような爪の変形には骨の変形が関与しています。つまり、爪の下の骨が隆起して爪床を押すことで爪の中央が隆起し両端が刺さるように陥入します。炎症はほとんど起こりませんが、上から抑えると痛みがあり、硬い靴がはけなくなります。サッカーなどの運動にも支障がでます。
治療には骨を削る必要があります。
院長は勤務医の時に多数の陥入爪の手術を行いました。おそらく広島の皮ふ科医では一番多くの症例を経験していると思います。
シェーマを示します。爪を除去した後に、皮膚を魚の口のように切開します。骨の上で皮ふを持ち上げて骨の突起を削って平坦にします。止血をした後、皮ふを戻して縫合します。
両足の手術を行うと入院が必要ですので、当院のようなクリニックではできません。可能な病院を紹介させて頂きます。
陥入爪の形状記憶ワイヤーの矯正治療
ワイヤーによる矯正治療を行っている施設もあります。当院でも、希望があれば検討しようと思います。手術のように大変ではありませんが、ただし長期間の治療が必要です。また、ワイヤーによる矯正だけで完治は困難なことが多い印象があります。
保険は適応されず、私費の治療になります。
手術料金(保険診療)
- 3割負担の時の支払い額になります。 1割負担の方はこの金額の1/3になります。
- 金額は趾1本あたりの金額です。したがって、両方の第1趾の治療をすると、倍の金額になります。 1本の趾では爪の片側と両側の治療は同金額です。
- 局所麻酔後の爪切りは受診当日にできます。爪母を切除する根治術は予約治療になります。
- 下記料金以外にも初診料、再診料、処方料、薬剤料がかかります。
- 下記料金は本ページ作製時の金額です。診療報酬の改定により変更になる可能性があります。
陥入爪の手術 |
陥入爪手術(簡単) |
手術代 約4,200円 |
陥入爪手術
(爪床爪母の形成を伴う複雑) |
手術代 約7,500円 |
Q&A よくある質問
手術は痛いですか? また、麻酔はどこにするのですか?
局所麻酔(歯の治療の麻酔と同じもの)の時に痛みはありますが、手術中は痛みはほとんどありません。麻酔は趾の付け根に2カ所注射します。趾の先端に注射するより、はるかに楽です。
手術後は痛いですか?
簡単な爪切りの時はほとんど痛みはありません。根治術の時は数日間痛みがあります。
入浴はできますか?
手術当日は入浴は控えていただきます。濡らすことも禁止です。
翌日受診してもらい、出血の有無を確認します。止血できていれば、翌日からシャワーは可能です。シャワー後は自分でゲンタシン軟膏を塗布してもらいます。
抜糸までの期間は?
根治術で縫合しますので、抜糸が必要です。約2週間後の抜糸を予定します。