平成27年5月に佐藤製薬から画期的な検査キットが発売されました。
パッチテスト用の簡便な検査キットです。
これまではパッチテストのためには、「パッチテスター」と呼ばれる試験紙付きのフィルムと、実際に調べたい物質(例:化粧品、植物、石けん、金属など)を別々に用意する必要がありました。特に、金属や化粧品アレルギーのパッチテストでは、試薬が高価で開業医では準備が困難でした。また、持参された化粧品では、小分けにしたり希釈したりが大変で、なかなか診療中には検査ができませんでした。
パッチテストパネル(S)では、元からパッチテスターと試薬がセットになっています。ですので、別々に用意する必要はありません。この点では画期的な検査ツールです。
これにより、簡便にパッチテストを行うことが可能となりました。
パッチテストパネル(S)の特徴について
パッチテストパネル(S)です。
(S)とありますので、(L)もあるのかと思いがちですが、(S)は small ではなくて、佐藤製薬の”S”とのことです。
1ユニットの中に、パネル1とパネル2の2枚の検査用パネルがはいっています。
計24種類のアレルゲンを検査することができます。
これを皮ふに貼って、反応を見ます。
アレルゲンの種類について
ここが一番重要ですが、単純に見ると訳がわからない項目が続きます。
日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会というかぶれを主に研究している学会が、
日本人で陽性率が高い原因物質を25種類ほど選定したものが、
「ジャパニーズスタンダードアレルゲン」と呼ばれています。
その中から、
21種類のアレルゲンを厳選し、さらにメルカプトベンゾチアゾールを加えた22種類のアレルゲンがこのパッチテストパネル(S)に使用されています。
各々の項目については、以下のリンクを参照して下さい。
No.1-8は
ここ。
No.10-17は
ここ。
No.19-24は
ここ。
ちなみに、No.9と18はコントロールといって反応のでないものを貼付します。通常は、ワセリンを調べることが多いですね。
ジャパニーズスタンダードアレルゲン25項目の詳細な説明は、次のリンクをクリックして下さい。
PDFファイルが開きます。
種類別に分けると、
種類 |
アレルゲン名 |
金属 |
ニッケル |
クロム |
金 |
コバルト |
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樹脂 |
ロジン |
ペルーバルサム |
ブチルフェノールホルムアルデヒド |
エポキシ |
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ゴム硬化剤 |
カルバミックス |
メルカプベンゾチアゾール |
メルカプトミックス |
チウラムミックス |
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ゴム老化防止剤 |
黒色ゴムミックス |
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防腐剤 |
パラベンミックス |
イソチアゾリノンミックス |
ホルムアルデヒド |
油脂 |
ラノリンアルコール |
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抗生物質 |
フラジオマイシン硫酸塩 |
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局所麻酔剤 |
カインミックス |
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香料 |
香料ミックス |
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染料 |
パラフェニレンジアミン |
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水銀化合物 |
チメロサール |
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パッチテストで何がわかるのか?
ここが一番重要ですね。
もちろん、このパッチテストパネル(S)を使用したから全ての原因がわかる訳ではありません。
しかし、これまで漠然と「毛染めが悪いのかも知れない」、「着ている服が悪いのかも知れない」などと思われていたことに、一定の結論が出せるかも知れません。
@
手湿疹:一番適応になるのは、頑固な手湿疹(主婦湿疹)だと思います。
両手に難治性の水疱を伴う皮疹が続いている症例です。
パッチテストの結果、パラフェニレンジアミンに陽性でした。
自分で毛染めをしているため、その成分でかぶれていたことがわかりました。
このような、難治性手湿疹では検査により原因がわかる可能性があります。
A
慢性湿疹:湿疹の原因はなかなか特定が困難ですが、全身性接触皮膚炎症候群と呼ばれる症状のことがあります。これは、かぶれが反復して生じたときに、かぶれた部位を越えて皮疹が拡大する疾患です。
胸背部に慢性的な湿疹が続いています。
検査の結果、メルカプトミックスに陽性を示し、仕事で使用されているゴム手袋によるかぶれが原因と考えられました。
他に、可能性のあるものとしては、
B タイヤなどのゴム製品、ブーツ、手袋、イヤホン、エスカレーターの手すり、化粧品のパフ、まつ毛用ビューラー、農薬、接着剤、石けん、革靴、下着、洗剤、工業用製品(切削油、不凍剤、潤滑剤、腐食防止剤、セメントなど)、化粧品、座薬、歯科材料、陶器、ソフトドリンク、絆創膏、インキ、滑り止め(野球のロジンバッグ、バイオリンなど弦楽器の弓への塗布剤など)、湿布薬、ガム、マスカラ、除毛ワックス、ダンスシューズの滑り止め、絵の具、ハエ取り紙、シナモンガム、アメ、メントールのタバコ、シャンプー、リンス、オーデコロン、コーラ、ナツメグ、黒こしょう、ペパーミント、ウイスキー、ブランデー、毛染め剤、家具のつや出し、金属のさび止め、ワックス、人工爪の接着、時計のベルト、ウェットスーツ、複写紙、マーカーペン、自動車や家電の塗料や接着剤、壁紙、衣料品仕上げ材、抗カビ剤、メラミン樹脂、タンニン加工、冷却ジェル寝具、冷感タオル…等々
に対するかぶれについては反応が出ることがあります。
パッチテストができる曜日
貼付して2日目、3日目に判定しますので、それらが休診日とかぶらない必要があります。
ですので、
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検査日 |
48時間判定 |
72時間判定 |
パターン1 |
火曜日 |
木曜日 |
金曜日 |
パターン2 |
土曜日 |
月曜日 |
火曜日 |
の日程で行います。
基本的には来院時に検査できます。
パッチテストパネル(S)による検査の料金
健康保険は適応されます。
以下の金額は3割負担の場合です。
初再診料、処方料などは別途必要です。
24項目のセット検査になりますので、個々の項目のみの検査はできません。(例えば、毛染めのかぶれが心配なので、パラフェニレンジアミンのみを検査したいというリクエストにはお答えできません。)
判定日には別途再診料が必要です。